練習帳

路上( mixologist2828.hatenablog.com )の下書きアカウント

5年後くらいの自分がこっそり読むための記録

   立派な一流企業に就職して、徐々にちがう世界に住むようになってゆく、気の置けない友人たちと集まってたわいもない近況報告をつまみにひとしきり飲んだ夜。こういう集まりでは誰もが出会った頃の喋り方を思い出すようだ。それでもみんな終電を捕まえるのにも慣れて、3本分くらいの時間の余裕を持って、また集まろうね、と心から誓い合って別れて、一人で中央線に乗る。予定よりも早い電車に乗れそうだけれども、さすがにもう快速電車は走っていない。もう一段階の効率性と割り切りも、いつかは身につけてしまうのだろう。

  お気に入りのポップバンドを流し、隣にまでは漏れないように気をつけながら音量を上げる。この暮らしを始めて1ヶ月くらいで編み出した、寝過ごさないためのちょっとしたライフハックだ。溢れ出るエゴと万人に媚びるポップセンスに没入していると、何もかもが — 高校生の寮生活のような盲目な純粋さではなく、自らの来歴と立ち位置と趣味や性癖やなんやかんやが自分のストーリーの正しい位置に多かれ少なかれ収まっていくその時期に、確立しつつある自我が見つけた最も心地よい場所、そういった人たちから少しづつ遠ざかっているという事実さえ  ー ごくごく自然なことのように思えていた。

  明日の朝起きてみると、きっと世の中の全ての物質が、俺に焦燥感を思い出させることになるのだろう。きっと顔を洗うその一欠片の動作さえも満足にできない、いつも通りの日常が来るのだと、その事実に思い至ってもなお、今夜はこれでいいのだと思えたし、あたりがよく見えるようになってその記憶が汚されてしまう前に、その証拠を残している今は何にも増して意味のある瞬間だと思えた。